せんたく物の汚れについて
日々、衣服に付着する汚れはいろいろありますよね。
コーヒー・醤油・カレー・錆・泥・土etc・・・
衣服に付着したら、洗濯して除去したい・・・
でも、汚れによっては洗濯で落ちなくて、残ってしまうものもあります。
洗い直しても、洗い直しても落ちない・・・
なぜなのでしょう?
それは、汚れに合った洗い方ができていないために起こります。
では、汚れに合った洗い方をするにはどうしたらよいのでしょうか?
答えは簡単。「汚れ」について知ることから始めましょう。
ここでは、「汚れ」について知ることと、家庭洗濯のしくみを解説してゆきます。
汚れの種類
まず、衣服に付着する主な「汚れ」は、大きく3つに分けることができます。
【水溶性汚れ】
文字通り、水に溶け易い汚れです。この汚れは、基本的に分子間結合が水素結合によるものが多く、水中で加水分解を起こし、溶解するものが多いので、水に溶け易くなっています。
[例] キワツキなど
【油溶性汚れ(油汚れ)】
有機化合物(油)に溶けやすい(馴染みやすい)汚れ。この汚れは、炭素原子の共有結合による分子構造のものが多く、同じ構造の有機化合物に溶けやすく(馴染み易く)なっています。
[例] 油じみなど
【不溶性汚れ】
水にも有機溶剤(油)にも溶解しない汚れ。無機物に多い。金属粉や錆は、各種酸やフッ水素を使用しての処理や、物理的な振動を継続的に行う処理をするが、適用できない生地もある。
[例] 土・泥・錆・鉄粉・砂塵・染料(色素)など
汚れについて大きく3つの種類を見てきましたが、普段の生活で衣服に付着する汚れって「水溶性汚れ」だけとか「油溶性汚れ」だけで付着することは、まずありませんよね。ほぼ、これらが「ごちゃごちゃに混ざっている」状態で付着することが多いです。例えば、カレールーや醤油・ドレッシングなどが挙げられます。
そこで、これらを除去(洗濯やクリーニング)するときは、この「付着した汚れの状態」がとても重要になります。多くの場合、普段の生活で付着する汚れは水溶・油溶・不溶が混ざった状態で付着します。
さて、今ここでラーメンスープが服に付着したとしましょう。
ラーメンスープは、ご存じの通り水分と油が混ざったものですよね。この飛沫が「飛んで」衣服に付きました。「飛んで」いる最中は、自由落下状態(いわゆる無重力状態)なので、飛沫は「水滴状」になり衣服に付着します。すると、下の断面図のようになります。
「油は水に浮く」ので水滴の表面に「浮き」ます。つまり「水溶性汚れ」が「油溶性汚れ」によって表面コーティングされた状態になります。不溶性汚れは「水に沈む」ものが多いので中心付近に集まります。
この状態で水のみで洗ってみても、表面の「油コーティング」に弾かれ、中の水に溶ける水溶性汚れまで水は届きません。結果、この汚れは水のみでは除去は困難です。
そこで、一般的洗濯には「洗剤」を使います。正確には「界面活性剤」といいます。
これは「界面」を「活性化」させる(物質の境界面を、ぐちゃぐちゃに混ぜる)薬剤です。最近、洗濯洗剤のCMで「洗剤成分が濃~い」といるアレのことです。
中身は「ミセル」といった分子構造があり、この「ミセル」は水分子に結合する(水になじむ)親水基と、有機化合物分子(油)に結合する(なじむ)親油基の両方を持っているため、これが水分子と油分(有機化合物分子)との橋渡しをすることで、「水に油が溶ける(乳化する)」現象を引き起こし、結果「油コーティング」を溶かし、中の「水溶性汚れ」まで水が到達することで、水による洗濯でラーメンスープを除去できることになります。
厳密には、この要因だけではないのですが、根本的な仕組みはこの通りです。
最近の洗濯洗剤が、界面活性剤(洗剤成分と言ってるもの)の比率を上げているのも、家庭での洗濯の幅を、より広げるために行っていると思われます。
このように、汚れの構造を理解しその汚れに適した方法で除去を行うことで、除去できる確率は上がり、衣服にも過大な負荷を与えずに除去ができます。
私たちは、これらのやり方はもちろん、洗い方を熟練の職人が27種類に細分化してクリーニング処理を行っています。
クリーニング処理の前には、そのときの季節・気温・湿度・水温・依頼品の状態などで、それぞれに適した洗い方を実施しなければならないので、職人が一点一点「手」と「目」で確認して、細分化された27種類の洗い方に選別してきます。
実際の洗いに際しては上記の気象条件や、依頼品の状況を踏まえて、洗剤の配合比率・洗濯溶液のpH値・洗濯温度・洗濯時間・乾燥室温度などを、その都度調節しながら、依頼品の汚れを適切に除去しつつ、負荷をできるだけ少なくするクリーニング処理を行っています。
私たちのモットーは、「一点一点に適した洗い」・「最小の負荷で、最大の除去」を丁寧に行ってくことで、ご依頼品を永く使っていただき、物もちをよくすることで社会のサステナビリティーに貢献することです。
↑ 公式Instagramでクリーニング事例などを発信中!