汗抜きってなに?

最近、クリーニング店で「汗抜き」とか「汗取り」などのサービスをよく目にしませんか?

 

クリーニングに出しているんだから、落ちてないの?なんで別途料金が必要なの?

 

今回は、「汗抜き・汗取り」のサービスについて解説してゆきます。

 

 

 

そもそも「汗」ってどんなもの?

 

汗はどんなものなのでしょうか?

水分や塩・ミネラルでできている、というのはよく耳にしますよね。

 

よく衣服に付く、汚れとしての「汗」は水・皮脂(脂肪酸)・乳酸・塩分・ミネラルなどがあります。

ミネラルとは、健康増進法により厚生労働省が規定している13元素、(鉄・カルシウム・マグネシウム・亜鉛・カリウム・ナトリウム・リン・マンガン・銅・ヨウ素・セレン・モリブデン・クロム)の各種金属です。

 

また、微量ながら鉛・アルミ・カドミウムなどの重金属や、ビタミンB1・2・6・12・Cも含まれる場合があります。

 

汗を「汚れ」として見た場合、

   水分・ミネラル・塩分・乳酸は、「水溶性汚れ」

   皮脂(脂肪酸)は、「油溶性汚れ」

   重金属類は、「不溶性のもの」、「水溶性のもの」に分けられます。

 

ヒトの汗は、季節・気温・湿度・その人のストレスの状態・体質によってその中身の比率が変化します。

例えば、個人差はあるものの全体の傾向として夏場などは体温の上昇を防ぐためほぼ水分になり、また、かく汗の量によってはミネラル・ビタミンが多く混じり、逆に冬場は、皮膚の乾燥を防ぐために皮脂(脂肪酸)の混じる割合が増えます。

 

とはいえ、「汗の汚れ」の中身は「水溶性汚れ」「油溶性汚れ」「不溶性汚れ」が混ざった状態であり、それが付着したモノがいわゆる「汗汚れ」と言われています。ただ、重金属類が含まれているケースは限られている上、非常に微量なので、ここでは割愛します。

 

 

 

わざわざクリーニング店に「汗取り」「汗抜き」があるワケ

 

これまで、取ってしまいたい「汗抜き」の“汗”について見てきましたが、ではなぜクリーニングでキレイになるハズなのに、わざわざ「汗抜き」なんてモノがあるのでしょうか?

 

 

洗っても落ちない汗は残る場合がある

 

以前の記事で、クリーニング業者ごとに経営方針・考え方があることをご紹介しました。

 

一般的なクリーニング業者は、カッターシャツ(ワイシャツのことを西日本ではこう言います。大正7年に現スポーツ用品メーカーのミズノが販売した「勝ったーシャツ」が定着)は水洗い、その他はドライクリーニング、と固定した生産ラインを組んでいる場合が多いです。

 

また、“「1回洗ったらそれで終わり」にして納品する。だって1回分のクリーニング代しかもらってないから”と考えるクリーニング業者も未だ多いです。

 

もちろん、生産効率などの経営方針・考え方なので、「良い」「悪い」は無いのですが、そうなると出てくるのが「汗」の問題です。

 

先ほど述べた通り、“汗汚れ”は「水溶」「油溶」の汚れが混ざっている状態で付着しています。

 

仮に、カッターシャツに付着していた場合、洗剤を使用した水洗いを実施すると、洗剤の種類や洗う温度、汚れの強度にもよりますが、「水溶性」「油溶性」の汚れが除去できる確率は比較的高いです。

 

問題は、ドライクリーニングのみで洗った場合です。この場合、有機溶剤(油)の種類・状態にもよりますが、「油溶性汚れ」は除去できる確率は高いです。が、残る「水溶性汚れ」の除去できる確率は低く、むしろ、残留する確率が非常に高くなります。

 

ドライクリーニングでは、通常「水溶性汚れ」に対応するため、有機溶剤(油)中に“ドライソープ”というモノを入れて洗います。これは水洗い洗剤の「水中に油を溶かす」に対して、「油中に水を溶かす」ように調整されたドライクリーニング専用の洗剤です。

 

さて、こうして行う「ドライクリーニング1回洗い」で残留するとは、一体どんなモノなのでしょうか。

 

それは、水溶性汚れの中でも、「金属類(ミネラル)」、「塩」です。

皆さんの中にも、夏場に「服に塩がふいた」経験がある方もいらっしゃるのでは?

 

塩がふくぐらい目で見えると、「なんとかしなきゃ」と思ったり、ふいていた塩が見えなくなると「取れた」と思うのではないでしょうか?

一番やっかいなのは、「目に見えない残留した汗の成分」です。

目に見えない状態ということは、「残留したミネラルの粒子(小さな結晶)」「塩の結晶」が目視できる限界を超えて、服の繊維に絡みついている状態になっているということです。

 

 

目に見えないし、臭いの元の皮脂汚れ(油溶性汚れ)はドライクリーニングで除去していて臭わないし、となれば、クリーニング業者もお客様もスルーしてしまいがちになります。

 

そして、毎回同じクリーニングを行っていると、だんだん残留成分がたまってきて・・・・

ついに、自覚症状が出てしまいます。

 

それは、「あれ?クリーニングに出したのに、なんかゴワついて(固くなって)ない?」です。

 

特に、スーツ・制服などでご経験のある方も多いと思います。

この自覚症状は、以上のような仕組みで起こります。

 

では、どうすれば良いのか?

そこで、今回のメインディッシュ、「汗取り(抜き)」が出て参ります。

 

プロのクリーニング店の汗取り

 

この「汗取り(抜き)」は多くの業者の場合、ドライクリーニングの際に“汗抜き剤”という「汗の除去に特化した薬剤」を入れて、有機溶剤(油)中に溶かし込む方法を採用しています。手軽で、手間もかからず、工程もさほど変わりません。かかるのは薬剤のコストと少しの手間ということで多くに採用されているようです。

 

なので、汗取りとは「通常の洗いにプラスするワケだから、その分加工代(手間賃)を頂きますよ。」というサービスになります。

 

とはいえ、結局のところ有機溶剤(油)中に溶かし込むという根本は変わらないので、水洗いの溶解度には及ばず、その効果は限定的になります。

 

私たちは、全ての商品をドライクリーニングの後、仕上げ時に人の目で一点一点検品しており、そこで残留物アリと判定されれば、「水洗い」か「ウェットクリーニング」にて再度洗いを実施し、除去に努めております。

 

とはいえ、検品で「目に見えない」「臭いもしない」残留物を見つけるのは、いくら熟練の職人であっても至難のワザです。また、何も無いのに無理に2回洗っても、生地に無用な負荷をかけるだけです。

 

そこで私たちの「汗抜き」は、ご依頼いただくと「汗抜きの認識票」をつけさせていただき、この認識票があるご依頼品は、検品の判定にかかわらず無条件で2度洗う方式を採用しています。

 

ドライクリーニングの残留物の除去には、水溶性に対応する水洗いがベストであり、なおかつ、汗残りの心あたりがあるお客様にもご協力いただくことで、「より確率の高い“汗”の除去」と「より負荷の低い“汗”の除去」との両立を目指しています。

 

一度、心あたりのある方は試してみてくださいね。

 

ちなみに、「ファ○リーズや、その他の除菌スプレーをふりかけて、洗わずにそのまま」を繰り返すとすぐ、ゴワつきが出ますのでご注意を。

 

 

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