クリーニング屋さんって、何をしているの?

お洗濯のプロとよく言われるクリーニング屋さんって、一体をやっているのでしょうか?

お金を払っているのだから、気になりますよね?

家でやっていることと、さほど変わらないのなら、クリーニングに出す価値は無いですよね? 

ホントはをやっているのか、解説してきましょう。

 

 

クリーニング店の行うクリーニングとは?

 

クリーニング店の行うクリーニングは、正式には「商業クリーニング」といいます。

ご家庭の洗濯とは違い、専用の設備・国家資格(クリーニング師)・保健所の確認が必要で、より広範囲の衣服がクリーニング可能です。

 

商業クリーニングは、大きく分けて4つの柱から成り立っています。

 

①水洗い(ランドリー)

一般的には、ドラム式の大型の水洗機(洗濯機)のものが多く使用されています。また、水の温度は30℃~80℃まで使用します。(家庭用の洗濯機は50℃までのものが多いです。)

使用する洗剤も、界面活性剤、pH調整剤、酸素系・塩素系漂白剤、酵素剤、各種酸化剤、還元剤など多岐にわたります。

薬剤の化学反応での汚れの除去作用もありますが、回転するドラム内で衣服が落ちる際の「叩く」(揉む)物理作用による除去も重要な作用の一つです。例えば、30kg機で衣服を回すと、ドラム直径は約1mなので、落下衝撃力Fは単純計算で588.75N(ニュートン)、kg換算だと60.08kgfになります。つまり、ドラムが1回転ごとに、60kgの力で叩いて(揉んで)いる計算になります。

また、温度も重要で、汚れそのものが衣服を着用している時に付着したこと、付着時は固体ではなく液体・ゲル状で付着したケースが圧倒的であることを考えると、水に汚れを溶かし込む際に、人体の体温以上の温度で洗ったほうが除去できる確率は格段に上がります。とはいえ、衣服の素材の耐久性、染色の堅牢度等も考えて、調整は必要になります。

 

②ドライクリーニング

これは、一般家庭には無いシロモノですね。

ドライクリーニングは水で洗うのではなく、有機溶剤(油)で洗うクリーニングです。

特に油汚れの油分の除去に効果的です。洗う溶剤(油)に汚れの油分を溶かし込み除去します。

一般的には、石油系溶剤(5号工業ガソリン)を使った、石油系ドライクリーニングが主流です。

ガソリンといっても、あのくさい「燃料のガソリン」ではなく、工業用のもので無色透明・無臭です。

(石油製品の中で沸点が35℃から230℃のものを総称してガソリンと言います。)

私たちは、その他にクリーニングする溶剤としてテトラクロロエチレンを採用しています。

石油系に比べ、油脂溶解力〈KB(カウリブタノール)値〉が倍ほどもあり、優れた油分の除去能力があります。しかし反面、強すぎるが故に適用となる衣服の素材が限定され、溶剤管理も法律により特に、厳格に行わなければなりません。

このクリーニング法の機械もドラム式の機械なのですが、目的は汚れの油分の除去なので物理作用というよりは、溶剤との炭素原子の共有結合による溶解がメインです。

 

③ウェットクリーニング

ウェットクリーニングとは、2016年の法改正により洗濯表示方式が変更になったのに伴い、ようやく認知度が上がったクリーニング法です。

 

ウェットな(濡れた)状態でのクリーニングという意味ですが、明確な定義はありません。

各クリーニング店で方法が異なるものの、共通しているのは、「極限まで物理作用(叩き・揉み)を抑えた水洗い」ということです。物理作用(叩き・揉み)を極限まで抑えているので、手作業であるケースが多いです。ドライクリーニングで落とせない汚れに対応する、補助的な位置づけにしているクリーニング業者が多いです。

 

一番多いケースとしては、水洗機(洗濯機)を使用せず、水を少量流すそばから、真空バキュームで吸い取る(リンサー方式)や、一点の依頼品に対しドラム式水洗機(洗濯機)のドラム全てに水を満たし、水中の緩やかな水流のみで洗う方式(ゆすり洗い方式)が主流です。

 

私たちは創業時の1962年(昭和37年)より、手作業で依頼品の状態を常に把握できる浸潤方式(浸け置き方式)を採用しています。一点一点、手で浸潤(浸け置き)し、依頼品の状態を把握しながら、洗剤量・温度・時間を調節し処理しています。

 

このウェットクリーニングは、ほぼ手作業のため、本革を除くすべての素材に適用できることが特徴です。例えば、高級素材とされるカシミア・アンゴラ・メリノ・モヘヤ・アルパカ・キャメルなども水洗いが可能です。

 

これらの素材(特に獣毛)を処理する際は、フェルト化による収縮を防ぐため、素材の表面に界面重合による高分子(ハイポリマー)生成した樹脂の被膜でコーティングした後、処理に当たります。

 

④仕上げ

仕上げというと、アイロンを当てることを想像する方も多いと思いますが、アイロンだけでなくプレス、蒸気蒸らし、温風圧、など衣服の整形にはさまざまな手段があります。

 

衣服を構成する生地の繊維には、その種類に応じて様々な特性があります。整形にあたっては、共通している「加熱した水分を与えると形状がやわらかくなる」と「冷却・乾燥時にある形状で固定化する」特性(熱可塑性)を利用します。つまり、“「蒸気で蒸して、柔らかくなったところで整形し、冷却・乾燥で固める」ことで、衣服のシルエットを本来設計された状態に整形する”工程を「仕上げ」と呼んでいます。

 

ご家庭と一番異なる部分は、この「冷却・乾燥」の部分ですね。

 

アイロンで例えると、ご家庭のアイロンでも蒸気はブシューと出して当てることはできます。しかし、そうして与えた蒸気の水分と熱は自然と冷める・乾くまで時間がかかり、その間にアイロンで整形した形が崩れてしまう可能性があります。素材によっては戻ってしまうこともあります。

 

私たちは、バキューム付きの専用アイロン台を使用することにより、アイロンで給蒸・加熱し整形するそばから、バキュームで吸い冷却・乾燥を同時に行うことで整えたの固定化を加速させています。

 

もちろん、すべて手作業であり、素材・生地厚などで、時間・押し強さなどを随時調整しながら行っています。

 

私たちは、仕上げの際に同時に検品を行っており、汚れが残っている場合には「再度洗い」を実施しています。ただ、初めの洗いと同じ方法で洗っても除去できる確率は低いので、初洗いとは別の方法で再度洗いを行います。初洗いがランドリー(水洗い)・ウェットクリーニングならドライクリーニング、その逆ならランドリー(水洗い)・ウェットクリーニングというように行い、少しでも汚れが除去できる確率が高くなるように、丁寧に取り組んでいます。

 

 

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