服に出たカビのトラブル!

クローゼットにしまってあった、コートやスーツ・ブラウス。

 

いざ着るとなって出してみると、ポツポツと黒いのが・・・カビが生えてる!

そんな経験を持つ方は多いんじゃないかと思います。

 

今回は、衣服に発生したカビについて解説してゆきたいと思います。

 

 

「カビ菌」という菌は、ホントはいない!?

 

カビと一口に言っても青・黒・白・茶・黄・赤カビと、いろいろ聞きますよね?

 

実は、いわゆる「カビ菌」という正式な名前の菌類は、いないんです。※1

 

「カビ」という名前は、菌類の状態の一部、それも目に見える大きさの「菌の集落(コロニー)」を指す俗称と言われています。

 

「カビ」は古来より人類に認知されているため俗称も多く、また「カビ」という言葉が指す「コロニーを作る菌類」は広範囲に及び、現在約8万種確認されております。また、随時発見・更新が行われ、常に増えています。

 

現在の分類では「カビ」と言われるコロニーを作る菌類は、「分生子形成菌」に属しているものが多いです。

そのなかでも、私たちに持ち込まれる衣類に圧倒的に多く発生しているのが、いわゆる「黒カビ」「白カビ」です。


また“いわゆる”が付きましたね。そう、これらも俗称なんです。

 

コロニーが黒っぽく見えるモノを、総称して「黒カビ」。

コロニーが白っぽく見えるモノを、総称して「白カビ」。・・・・そのまんまですね。

 

古来よりお付き合いしているので、見た目重視。といったトコロでしょうか。

 

 

それでは、衣類に付きやすい“いわゆる”「黒カビ」と「白カビ」について見てゆきましょう。

 

「黒カビ」

 

「黒カビ」と呼ばれるモノの代表的な菌種は、クラドスポリウム属というグループであり、そのなかでも代表的なのが

       ○クラドスポリウム・クラドスポリオイデス

       ○クラドスポリウム・スフェロスペルマム      

この2菌種です。空気中に浮遊する菌の中で最も多いとされていて、まぁ、どこにでもいる菌です。元々は土壌に生息しており、ごく普通の土壌菌です。土壌にも空中にも、どこにでもいます。

 

もちろん家の中にもいます。壁・天井・床などで黒いヤツが生えてきたら、だいたい彼らがいます。衣類も例外ではなく、同じく彼らがいらっしゃっているパターンがほとんどです。

 

このいわゆる「黒カビ」「白カビ」の属している「分生子形成菌」のグループは、皆さんのイメージ通り、「分生子(胞子)」が付いて“発芽”し、菌糸・柄(木の幹みたいなもの)を伸ばし、コロニーを作り、柄の先端から「分生子(胞子)」を放出することで、生き延びています。

 

クラドスポリウム属の場合、この菌糸・柄の時点で黒がかった着色があるため、コロニーははっきりした黒色で確認できます。

 

実は、衣類のカビの除去の中では、やっかいで、除去の難易度も高めなんです。

 

皆さんも「カビの根まで効く!」というCMでご存じの通り、この“根”という言葉が指すものが、菌糸に当たります。

 

クラドスポリウム属菌の場合、この「菌糸」の時点で着色があるために、繊維表面だけでなく、繊維中の微細な空洞にはびこった菌糸まで除去しないと「目に見える」状態のままなので、除去したコトにはならないのです。

 

住居の壁・天井・床などに発芽すると、それを除去するのに比較的強めの薬剤を使用することができますが、衣服の場合となると話は変わってきます。

 

布地の繊維・染色に極力ダメージが出ないように、使用する薬剤・薬剤濃度・温度・濯ぐ(すすぐ)溶剤の種類・物理作用(揉む・叩く)などの選択肢が限られ、なおかつ取り切らないと「目に見える」状態は続きます。

 

発芽して1週間~10日ほどのコロニー(カビ)は、繊維中への侵入が浅いため、比較的繊維の負荷を少なくして取り切る可能性は高いでしょう。

 

しかし、それを過ぎると侵入する深度も深くなり、取り切るには特殊な処理が必要になるケースが多くなってきます。

 

でも見つけた時点で、いつ生えたかなんて分からないですし、前回クローゼットにしまったのは何ヶ月前かな?というパターンも珍しくありません。

 

「白カビ」

 

先ほども触れたように、この俗称は見た目重視なので「白カビ」と言いつつ、実はアオカビ(和名)の仲間だったりします。 もう、何が何だか・・・

 

このいわゆる「白カビ」と呼ばれるモノの代表的な菌種は、ペニシリウム属菌というグループであり、なかでも代表的なものが、

   ○ペニシリウム・カマンベルティ

   ○ペニシリウム・シトリナム          

などが挙げられます。なんだか、おいしそうな名前が入っているなぁ~と感じたアナタ!正解です。

 

ペニシリウム・カマンベルティは、カマンベールチーズのあの「白いヤツ」です。

チーズに生えるとウマイくせに、衣服に生えるとジャマなんです。

 

でも、服に生えたコロニーは、いくら“カマンベールのやつ”といっても、口に入れないでくださいね。

下手をすると体調を崩しますので。

 

また、名前の前半でピンときた方は、なかなかのドラマ通。

ドラマ「JIN--」でおなじみ、抗生剤の原料「ペニシリン」を作る、憎めないヤツなんです。

 

とはいえ、衣服に生えると話は変わります。

ジャマなんです。ホント。取らないと。

 

ところが、このペニシリウム属の皆さんは、先ほどのクラドスポリウム属の方々よりか、いくぶんかはお行儀が善い方々です。

 

なんせ、菌糸に着色が無いですからね。これは行儀が善い。除去する側からすると、“後片付けまで考えてるな”って感じますね。

 

また、いわゆる「白カビ」がついた、と言って私たちに持ち込まれる場面では、繊維の表面にだけ広がっているケースが多いのです。なので比較的、強くない処理でも除去でき、なにより生地の繊維への負荷も軽く済みます。

 

もちろん、重症のケースもあります。重症になると、コロニーの規模も大きく、色は和名の通り緑色(日本では、しばしば“緑”を“青”と言います。〈例〉青信号、青リンゴ・青汁など)になります。

 

今回は、衣服の「カビのトラブル」の仕組みを解説しました。

 

カビは、見つけた時点で発芽から時間がたっているケースがほとんどです。

正直、除去する側から言わせていただきますと、“見つけたら、迷わず頼って欲しい”です。

 

私たちでも、衣類にかかる負荷をコントロールしながら除去するために、職人がかかりきりで、依頼品の状態、薬剤の種類・濃度・pH値・温度・溶剤などを監視・確認しながら処理に当たっています。

 

私たちの受けるご依頼でも、ご家庭でいろいろ試された結果、余計に除去が困難になるケースや、シミの箇所だけ漂白やその他の処置をしてしまったがために周囲との色合いが異なり、余計に目立つ結果になってしまった依頼品を、近年非常に多く見かけます。なかには、復元が困難なものもあります。

 

カビを見たら、迷わずクリーニング店に頼ってみましょう。

 

※1 和名でカビ等の名称はあるが、和名自体が慣習的な名称であるため。

 

 

意外に見落としがちなカビ

 

これは、春先~夏にかけて持ち込まれるケースが多い、「レースカーテンのスソ」です。

 

特に、床までの長さのレースカーテンのスソに、びっしりと「黒カビ」が生えた依頼品が、この時期に多く持ち込まれます。

 

冬場、お部屋は暖房を入れますよね。

当然外は寒いです。すると、窓の内側は結露し、水滴が下に落ちてきます。

 

暖房のかかった部屋の湿度は低くなるので、加湿器を入れる方も多いと思います。

すると結露した窓内側のサッシ下にたまる水はさらに多くなり、窓内側のサッシの床付近は湿気が多くなってきます。

 

さらに、レースカーテンの部屋側には厚手の本カーテンがあり、この空間にフタをしてしまっています。

ダメ押しに、暖房が効いた部屋はカビにも快適な20~25℃付近。ともなれば・・・あとは分かりますよね。

 

「レースカーテンのスソ」の定期的なチェックをオススメします。

ちなみに、二重窓・樹脂サッシの環境下では、発芽の確率は低いと思われます。

 

 

 

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